Column54 (06/30):イノベーション促進に向けた公共調達(3)(オランダ)
Column52「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(1)」、Column53「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(2)」では、イノベーションの促進に向けて公共調達を活用するカナダの取組を紹介しました。
今回は、EUの中で、公共調達を政策的に活用する取組(Strategic Public Procurement)が進んでいる、と言われているオランダの取組を紹介します。
オランダでは、議会の要請により、2000年半ば頃からイノベーションの促進に向けた公共調達を活用する取組(アクションプランの作成等)が始まり、2011年から、イノベーションの促進に向けた公共調達に関わる数値目標が設定されています。
具体的には、各省庁の調達予算の2.5%を、イノベーション指向型の公共調達(新たなモノ・サービス若しくは既存のモノ・サービスを改良したものの調達)として支出する、という数値目標が設定されています。
さらに、数値目標の達成に向け、2013年からはInnovation Procurement Urgentプログラム(イノベーションの促進向けたオンライン上のプラットフォーム(ネットワーキングミーティング)の創設等)が実施されています。
このようなイノベーション指向型の公共調達を促進するために数値目標を設定している点は、オランダの特徴の一つと言えるでしょう。
日本でも、Column2「公共調達に関する制度」で紹介したとおり、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)」(昭和41年法律第97号)があり、毎年閣議決定される、「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」で、中小企業・小規模事業者向け契約目標が示されています。
平成28年度の官公需予算総額に占める中小企業・小規模事業者向け契約金額の目標は約3兆8,791億円、比率は55.1%です。
このように、数値目標を設定することは、取組を促進するための一つの方法だと思いますが、重要な点は、目標の達成状況に関する定量的・定性的な評価の実施です。
オランダでは、各省庁が実施する評価において、定性的な評価(イノベーションを阻害する要因を見直したか等)や定量的な評価のうち、定量的な評価が推奨されていますが、具体的な評価方法については、民間企業等の取組を基に検討が進められている状況です。
定量的な評価の難しさはあると思いますが、長期的な視点から、どのようなイノベーションがどの程度のコストで実現したのか、有効性、経済性の観点からの評価は重要でしょう。
(出典)
EUウェブサイト
Government of Netherlandsウェブサイト
中小企業庁ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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