Column50 (05/21):女性活躍推進に向けた公共調達の活用(5)
公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を評価する取組として、Column6「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(1)」、Column26「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(3)」では国等の取組を、Column8「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(2)」では地方公共団体の取組を紹介しました。
今回は、東京オリンピック・パラリンピック大会の準備・運営段階で調達するモノ・サービスに適用される調達基準を紹介します。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、「組織委員会」という)は、調達において、経済合理性や公正性等に加え、持続可能性に配慮した調達を行うため、持続可能性に配慮した調達コードの基本原則(2016年1月)を策定・公表しています。
基本原則は、以下の4つです。
1)どのように供給されているのかを重視する
2)どこから採り、何を使って作られているのかを重視する
3)サプライチェーンへの働きかけを重視する
4)資源の有効活用を重視する
上記の基本原則や、持続可能性に関わる国際的な合意、行動規範(国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」等)を踏まえ、組織委員会は、より具体的な内容が記載されている「持続可能性に配慮した調達コード」(第1版)(以下、「調達コード」という)を策定・公表しています。
この調達コードは、様々な項目から構成されていますが、以下のような女性活躍に関わる項目も含まれています。
(3)人権
「女性の権利尊重」
・サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、女性の権利を尊重し、女性のエンパワメントや男女共同参画社会の推進、リプロダクティブヘルス・ライツの観点から、女性人材の登用や育児休暇の充実等に配慮すべきである。
さらに、サプライヤー等が調達コードを遵守し、サプライチェーンへの働きかけを担保するための方法も示されています。
〇サプライヤー又はライセンシーとなることを希望する事業者に対して
・事前に調達コードの内容を理解すること
・調達コードの遵守に向けて取り組むことを事前に誓約すること
・サプライチェーンへの働きかけを含む調達コードの遵守に向けた取組状況(予定を含む)を、組織委員会が指定する方法により開示・説明すること(契約締結後も開示・説明すること)
〇サプライヤー又はライセンシーに対して
・契約締結前後、必要に応じて調達コードを遵守するための体制を整備すること
・契約締結前後、調達コードの内容を伝達するための研修・教育等の適切な措置を講じること
・契約締結前後、組織委員会の求めがある場合に提供できるよう、調達コードの遵守に向けた取組状況を可能な限り記録化すること
・契約締結前後、必要に応じて組織委員会が実施する、調達コードの遵守状況の確認・モニタリングに協力すること
・サプライチェーンに対して調達コードの遵守等を働きかけること、また、サプライチェーンへの働きかけ等を確実にするため、サプライチェーンとの間の契約に、組織委員会が別途作成するサステナビリティ条項のモデル条項又はこれに類似する条項を挿入することを検討すること
・調達コードの不遵守があることが判明し、組織委員会が改善措置を要求した場合、一定期間内に改善計画書を提出し、承認された計画書に従って、改善に取り組み、その結果を組織委員会に報告すること(適切な改善に取り組んでいないと認められる場合、契約を解除することが可能)
調達コードにおいて、女性の人材登用や育児休暇の充実等、様々な配慮事項を具体的に示すだけでなく、それがサプライヤー、ライセンシー及びサプライチェーンにおいて実行されるよう、予め、どのような者が(参加希望者、契約相手方)、どのようなことに取り組む必要があるのか(参加希望者には事前の誓約等)を示すとともに、調達コードの不遵守による契約解除の可能性まで踏み込んでいる点は、注目に値するのではないでしょうか。
(出典)
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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