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2016-12-16

Column26 (12/16):女性活躍推進に向けた公共調達の活用(3)

「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」(平成28年3月22日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)は、各府省等が価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う場合、女性活躍推進法に基づく認定企業(えるぼし認定企業)や、次世代法に基づく認定企業(くるみん認定企業・プラチナくるみん認定企業)、若者雇用促進法に基づく認定企業(ユースエール認定企業)を加点評価するよう定めています。

このような女性活躍推進に向けた公共調達の活用は、Column6「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(1)」Column8「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(2)」で、制度の概要や地方自治体の取組事例を紹介しました。

ここでは、各府省の取組事例を紹介するとともに、このような取組が公共調達に関心をもつ企業にどのように影響するのか考えてみます。

はじめに、各府省の総合評価落札方式における、えるぼし認定企業等への加点の状況を見てみましょう。

経済産業省の「平成28年度産業技術調査事業(日本版バイ・ドール制度の評価に関する調査) 」では、総合評価落札方式の評価点200点(うち加点170点)のうち最大10点が加点されています。

総務省の「新たな行政不服審査制度の運用に関する調査研究」では、総合評価落札方式の評価点100点(うち加点50点)のうち最大5点が加点されています。

上記の経済産業省、総務省の事業は、あくまでランダムに抽出した2事例ですが、いずれも、評価点の合計に占める配点の割合は5%となっています(具体的な配点については、契約の内容に応じ、各府省において設定することになっています)。

えるぼし認定企業200社(10月31日時点)等には、企画提案書における提案内容の良否に関わらず、数%程度の得点が自動的に配点されるのです。

そこで、1,000万円規模の調査研究の入札(総合評価落札方式)に参加した2社への、えるぼし認定企業であることの影響を考えてみます。

(仮定)
・予定価格:10,000千円
・価格点の満点:50点
・技術点の満点:100点(えるぼし認定企業の加点は最大5点)

(入札価格、技術点)
・入札者A:入札価格9,000千円、技術点85点(えるぼし認定企業のため加点は5点)
・入札者B:入札価格8,200千円、技術点80点(えるぼし認定企業でないため加点は0点)

・入札者Aの総合評価点:価格点=(1-9,000/10,000)×50=5.00点、総合点=価格点(5.00点)+技術点(85点)=90.00点
・入札者Bの総合評価点:価格点=(1-8,200/10,000)×50=9.00点、総合点=価格点(9.00点)+技術点(80点)=89.00点

入札参加者Bの入札価格は820万円と、入札参加者Aよりも80万円低い価格で入札し、入札参加者Aと入札参加者Bの間の技術点は、えるぼし認定企業であることの加点(5点)以外は同じ技術点です。しかし、えるぼし認定企業であるための加点5点の影響で、80万円高い価格で入札した入札者Aが落札することになります。

仮に上記の調査研究の予定価格が1億円規模であれば、800万円高い価格で入札した入札者Aが、えるぼし認定企業であることの加点により落札することになります。

上記はあくまでいくつもの仮定をおいた架空の事例ですが、各府省が価格以外の要素を評価する多くの調達において、えるぼし認定企業等を加点評価するようになると、この加点が落札結果に影響を及ぼすケースもあるかもしれません。

Column2「公共調達に関する制度」で書いたとおり、公共調達において一定の政策目的を達成するための配慮を行うことは、ある意味、新たな予算措置を必要とせずに、政策目的を達成する手段が増えることを意味しています。財政状況が厳しい中、今後、益々こうした取組(付帯的政策)が推進されることが考えられます。付帯的政策の影響で、落札結果が左右されるケースもでてくるのではないでしょうか。

(参考資料)
厚生労働省ウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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