Column13 (10/04):付帯的政策に関わる7つの成功要因(1)(米国)
Column12「付帯的政策に関わる評価(米国)」では、中小企業庁(Small Business Administration)が、中小企業の受注機会促進に関わる各府省の取組の達成状況を評価したSmall Business Procurement Scorecardsを公表していること、また、Small Business Procurement Scorecardsの6段階評価の結果を導くための要素として、「7つの成功要因」の評価結果が含まれていること等を紹介しました。
<7つの成功要因>
1.中小企業の活用に関する積極性
2.上級管理職の関与
3.中小企業の契約データの質
4.発注担当者のトレーニング
5.中小企業に対する働きかけ・支援
6.中小企業不適合型一括発注契約(bundling契約)の回避
7.小規模・条件不利事業者活用促進室(Office of Small and Disadvantaged Business Utilization)の取組
ここでは、この「7つの成功要因」の6番目、「中小企業不適合型一括発注契約(bundling契約)の回避」を紹介します。
米国連邦政府の調達に係る手続を規定しているのは、主に連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation、以下、「FAR」という)です。
FARでは、2つ以上の契約をまとめる方法として、2種類の方法を設けています。第一に、一般型一括発注契約(consolidation契約)、第二に中小企業不適合型一括発注契約(bundling契約)です。
この2つの契約方法は、2つ以上の契約をまとめるという意味で同じ手法ですが、中小企業不適合型一括発注契約は、一般型一括発注契約の一部です。中小企業不適合型一括発注契約は、直近の契約で1者以上の中小企業が実施、または、中小企業に適した契約をまとめることで、中小企業1者での受注に適さない契約になるという点で、一般型一括発注契約とは異なります。具体的な要件は以下のとおりです。
<一般型一括発注契約と中小企業不適合型一括発注契約の要件>
a.一般型一括発注契約に該当するか決定する際の項目
※以下を満たす場合は一般型一括発注契約に該当。ただし、以下の手続が適用される契約は、2百万ドル以上の場合のみ。
・複数の業務内容で構成されていたり、複数の機関からの発注である。
・以前は、2つ以上の契約で実施していた。
b.中小企業不適合型一括発注契約
※以下を満たす場合は中小企業不適合型一括発注契約に該当。ただし、以下の手続が適用される契約は、米国内で契約が履行される場合のみ。
・一般型一括発注契約に該当する。
・中小企業が一般型一括発注契約(一部でも可)を実施していたか、または、以前実施していた。
・中小企業の受注に適さない(以前は中小企業の受注に適していた)。
上記2つの一括発注契約を行う際、FARでは、一括発注を実施した場合と実施しない場合の2つのケースを想定した便益分析を実施し、便益が一定の基準を上回る場合は一括発注を認める、ということを規定しています。
特に、中小企業不適合型一括発注契約は、2つ以上の契約をまとめることで、中小企業の受注に適さない契約となるため、一般型一括発注契約以上に厳格な説明責任を発注官庁に求めています。
このような厳格な説明責任の要請に加えて、中小企業不適合型一括発注契約を回避する努力をしているかどうかという点について、毎年度、小規模・条件不利事業者活用促進室(Office of Small and Disadvantaged Business Utilization)(注)に設置されている専門家会議が評価し、各府省のSmall Business Procurement Scorecardsの評価に反映されるのです。
日本でも各府省におけるモノやサービスの一括調達・共同調達が推進されていますが、上記のように、中小企業への影響を考慮して、中小企業に影響がある一括発注を行う際は、それ以外の一括調達・共同調達より厳格な説明責任を求める、ということや、毎年度、その取組を評価する、ということは考えられるかもしれません。
(注)小規模・条件不利事業者活用促進室の主な役割は、a)契約のうち中小企業不適合型一括発注を特定すること、b)中小企業の参加促進に向け、発注担当者と調整を行うこと、c)中小企業不適合型一括発注契約の下請契約として中小企業の参加を促進すること等
(参考資料)
川澤、大野「公共調達における政策的配慮と経済性の確保-我が国及び米国連邦政府の取組等を基にした検討-」会計検査研究第54号(2016.9)
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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