Column4 (08/29):8(a) Business Development Program (米国)
Column3「公共調達における付帯的政策(米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達について(一部例外あり)、以下のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。
<set-asideの対象>
・8(a)Business Development
・HUBZone Program
・Woman Owned Small Business Program(includes Economically Disadvantaged Woman Owned Small Business concerns)
・Service Disabled Veteran Owned Program
上記のプログラム・カテゴリーの内容は、どのようなものなのでしょうか?ここでは、「8(a)Business Development」を取り上げます。
8(a)Business Developmentは、米国中小企業庁(U.S.Small Business Administration、以下、「SBA」という)が提供するプログラムです。このプログラムは、不利な条件下にある小規模事業者(新規事業者等)の競争力を向上させることを目的としています。
プログラム参加者は、契約担当官がset-asideを適用して発注する案件(基本的には3,000ドル~150,000ドルの案件)を、物品の販売やサービスの提供では総額4百万ドル、物品の製造では総額6.5百万ドルまで随意契約を結ぶことができます。また、共同体やチームで入札に参加することが認められるため、規模の大きい案件への参加も可能になります。さらに、SBA又はSBAの委託先から公共調達に参加するための各種支援(経営支援、マーケティング支援等)を受けることもできるのです。
もちろん、このような充実した支援を受けられる半面、制約もあります。まずは、支援期間です。支援期間は9年間の期限が設けられており、最初の4年間は成長段階、残りの5年間は自立経営への移行段階として位置付けられています。また、取引先についても、公的部門と民間部門をバランスよく獲得することが求められています。
参加企業は、プログラムを通じて、官民双方の市場での競争力を高めるべく努力する必要があるのです。さらに、プログラムを実施することで、目的が達成されているかを確認するため、SBAから年次報告や事業計画等を基に進捗の把握・評価を受けることにもなります。
このように、8(a)Business Developmentの参加者は、各種経営支援を受けた上で、一定金額まで随意契約が認められ、共同体等により規模の大きい案件への参加も可能になる等、積極的な優遇措置が講じられる一方で、優遇措置には期限が設けられ、SBAから企業レベルで進捗状況を評価されるといった、積極的な措置に対する確実な効果の発現も求められる点が特徴といえます。
日本では、例えば、官公需法では、8(a)Business Developmentの参加者ほど、積極的な優遇措置が講じられない一方、優遇措置の対象に限定はなく(中小企業者全般)、優遇措置の期限も設けられていません。特定の中小企業に積極的な措置を講じて局所的な効果の発現を期待するか、幅広い中小企業に措置を講じて広範囲での効果の発現を期待するか、まさに政策判断の違いと言えるでしょう。
(参考資料)
U.S. Small Business Administrationウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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